衛星探査の秘技
海外衛星受信は文字では表せないノウハウが必要です。
自分で研究して会得するのが結果的に自分のためになりますが、私が実践している手法を紹介します。
題材は、PAS-2 KuのABC NewsOneの受信です。(2001/6/1)
機材はチューナーがDMT-1000とCST-3000HP、アンテナがマスプロ60cmオフセット、簡易スペアナSPECTRALOOKに液晶テレビです。
受信地は岡山県倉敷市です。
なにはともあれ、テレビが必要です。
アンテナの直近まで持っていけるように電源とビデオケーブルを延長した液晶テレビを使います。
微弱電波で飛ばすという方法もありますが、有線の方がノイズが乗らない分有利と思います。
ハードオフで2000円でした。
これは電池では動作しません。自動車用で外部電源が必須なので安かったのでしょう。
カラー方式がNTSCしか見えないのが致命的な欠点ですが、衛星を見つけるために使うので、方式変換機やDMT-1000の方式変換機能のお世話になります。
まずは衛星を探さなければなりません。
信号強度は絶対値も必要ですが、強度の変化に早いレスポンスで追随してくれないと探すのに苦労します。
残念ながらデジタルチューナーのレベル表示はどの機種でも極端にスローレスポンスです。
そこで、アナログチューナーのレベル表示を借用することにします。
デジタルチューナーDMT-1000のIFスルーにアナログチューナーのCST-3000HPと簡易スペアナSPECTRALOOKを分配器経由で繋いで、CST-3000HPのライン入力にSPECTRALOOKを接続してCST-3000HPの信号レベルとSPECTRALOOKのスペクトラムをスーパーインポーズします。
CST-3000HPのLNBの電源供給はオフにしておきます。DMT-1000から供給します。
デジタルチューナーにはあらかじめ目的の周波数、シンボルレートやFECなどのパラメータを設定しておきます。
アナログチューナーの周波数は電波が強いと言われている周波数にしましょう。
目的の周波数のレベルとスペクトルを観測して、アンテナを上下、左右に振りながらそれらしい位置を探します。
また、偏波角が重要なので、水平、垂直は間違えないように。
ここでいう水平、垂直は衛星から見て地球が水平、垂直なので、水平線を頭に入れて傾けましょう
ここでは、チューナーからきちんと水平、垂直の切り替えが出来るLNBFを使う前提で説明します。
海外仕様のチューナーにディレクTVのLNBFをそのまま繋ぐという無謀なことは止めましょう。
どうしても使いたい場合の対策方法はここにあります。
偏波とは、光の世界での偏光と同じ意味です。
偏波には直線偏波と回転(円)偏波があります。
垂直偏波、水平偏波は直線偏波の種類です。
垂直、水平とは電磁波(電波)が地面に対して縦に振動しているか、横に振動しているかです。
単にアンテナの棒が地面に垂直か、水平かと思ってください。
同じ周波数でも偏波が異なると受信が困難になります。
逆にいえば混信を避けることが出来ます。
周波数を少しずらす手法と合わせると、同じ周波数の幅(帯域)でも約2倍のチャンネルを取ることが出来ると思ってください。
少々受信設備にコストがかかってもたくさんのチャンネルを持ちたい通信衛星(CS)でよく使われます。
衛星から地球の水平性を見て垂直、水平なので、受信側で見ると東にある衛星は左に、西にある衛星は右に倒れてきます。
これを偏波角といいます。
余談ですが、回転偏波はその名のとおり竜巻状です。
右巻きと左巻きがあります。
回転方向が逆のアンテナを使うと、やはり受信が困難になります。
回転偏波を使うと偏波角という概念がいらなくなるので、アンテナの設置がいくぶん楽になります。
周波数の使用効率よりも受信設備のコストを重視する放送衛星(BS)でよく使われます。
皿の後ろからLNBを見た図
皿からLNBに向かってみての大体の傾きですが、(LNBの構造によっては左右が逆の場合もあります)LNBの偏波角を0度を|とすると、
真南にある衛星は、|(フィードホン中のアンテナが−で水平偏波)
東にある衛星は、\(フィードホン中のアンテナが/で水平偏波)
西にある衛星は、/(フィードホン中のアンテナが\で水平偏波)
これは地球の形が/\ということを考えるとすぐに理解できると思います。
PAS-2は東の端なので、縦長の部分が\=中のアンテナが/ですね。上の写真もそうなっていると思います。
偏波が電圧切り替え式のLNBFも同様です。きちんと偏波切り替えが出来るのならこのような倒れ方をします。
スペアナがあれば、LNBを少しずつ回して反対側のスペクトルが一番小さくなる位置に合わせればよいのでかなり楽です。
ディレクTVのLNBFを活用したいという話をよく聞きますが、必ずチューナーとLNBFの間にここにあるアタプタを入れてから試してください。
市販品もあるそうですが、私は自作しました。
国内仕様LNBFは11/15Vで垂直/水平に切り替わりますが、海外仕様チューナーは14/18Vあたりが多いです。
つまり、そのまま繋いでしまうと、
つまり、まともには動作しないということになります。
ここまでの説明はきちんと偏波面の切り替えが出来るという前提なので、出来ない場合は上の図とは90度右か左に合わせる必要があるかもしれません。
水平を90度倒すと垂直になりますね。
PAS-2の隣のPAS-8用のディッシュの例もお見せしましょう。
かなりの東に位置しています。
元ディレクTV用の45cm DXアンテナ製です。
このアンテナはチューナーから偏波を電圧切り替えできるようになっています。
PAS-8のOSBやHMVは水平偏波です。
最近までPAS-2/8兼用にしていました。
これでABCはめったに見えませんでした。(ごくたまには見えたのだが)
次に西にあるASIASAT-3Sです。
元ディレクTV用の45cm 東芝製アンテナです。
PAS-2とは反対側に倒れていますね。
アンテナはありそうな方位より若干東に向け、アンテナを上下させてレベルが変化したら微調整、しなかったら方位角を若干西に向け、また上下に振ります。
レベルの変化はかなりあるので、慣れればスペアナ無しでもノイズか信号かの見分けはすぐにつくようになります。
私は簡易スペアナを買ってしまいましたが。
それらしい信号があればロックするか確認します。
DMT-1000はSignal Check機能があり、ビッピッと音がします。
信号の品質が高いほど音も高くなります。
レベルチェックと合わせて、仰角、方位角、偏波角を最良へ追い込みます。
信号強度も重要ですが、絵になるかどうかは品質(Quality)の値で決まります。
できるだけ高い品質になるよう調整してください。
ABCの場合、PID(Packet ID:これが音声、これが映像のデータだよ、という識別子)をマニュアル入力しないと見れません。
注意して下さい。
PAS-2のKuにあるチャンネルはほとんどそうですが...。
無事追い込めたらスキャンして、メモリへ書き込みます。
INFOボタンを押すと現在の信号強度(Strangth)と品質(Quality)を見ることが出来ます。
ちょっと弱いかな、と思ったらチェックして、場合によってはアンテナの調整をしましょう。
私の場合、K-MAXやKNTV、SheTVはQualityが98まで行くのに対して、ABCは74とかなり厳しい値です。
おまけにしょっちゅう停波したり不安定になったりと、なかなか楽しませてくれます。
見つからないという方、気長に探しましょう。