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これから海外衛星を受信してみたいと思っている初心者の方に知っていただきたい情報です。(2002/7/21)

リスクの大きさを知った上で、非日常の味わえるTVRO(TV受信のみの趣味)を始めてみませんか。


目次

機材調達

情報収集

アンテナの知識

日本で入手可能なアンテナ

周波数の違い

アンテナ設置の知識

カラー方式

チューナーの知識

受信可能な周波数範囲

シンボルレート,FEC,PID

フットプリント

衛星の事情以外のトラブル

アナログBSチューナーをレベル計として使う

カタログスペックの読み方


機材調達

国内の販売店

アサヒデンキ

ワード

コンテック

エニーテック

海外衛星テレビ受信機器

海外の販売店

Smaller.com


情報収集

日本語の情報

まささんの部屋 Cバンドの情報が詳しい

とくしま発きままな情報 韓国コリアサット専門 東日本では受信困難

英語情報

Lyngsat 周波数情報が詳しい 英語だが単語の羅列なのであまり問題にならない

Apsattv 英文解釈の実力が必要だが詳しい解説

中国語情報

www.tvro.com.tw 漢字なのでそれなりに理解できる


アンテナの知識

静止衛星は赤道の上空約36000Kmに並んでいる。

この距離は、スペースシャトルでは到達できない遠い距離。

光の速度でも届くまで0.6秒程度かかってしまう。

そのため、宇宙空間で稼動中の静止衛星を直接見た人間はいないし、故障しても修理にも行けない。

いつ見えなくなってもおかしくないことを知り、衛星受信のリスクは高いことを認識すること。

赤道上空しか存在出来ないので、静止衛星は一直線に並んでいることになる。

最低必要な設備

・同軸ケーブル

国内のBS用が流用可能 。地上波用はだめ。

・パラボラアンテナ 

オフセット...TDK以外のBSアンテナのような形状 。見た目より仰角が30度ほど上になる(オフセット)ため、低い仰角は苦手だが、見た目があまり上を向かないので雨や雪が積もりにくい 。衛星方向に邪魔なものがつかないので効率が良い。Kuバンドでよく使用される。

センターフィード(プライムフォーカス)...TDKのBSアンテナのような形状。特徴はオフセットの反対。Cバンドでよく使用される。

 

・フィードホン

電波の受け口 オフセットとセンターフィードでは形が違う(図はオフセット用)

 

・LNB ローノイズブロックコンバータ

 図は2本写っている 受信した高い周波数の電波を低い周波数の信号に変換する

・LNBF

最近はLNBとフィードホンが一体型になったLNBFが多い

その他、アンテナ取り付けのマストや足場、ステーなども必要。


日本で入手可能なアンテナ

ここでは海外衛星用アンテナではなく、一般の電気店で入手できるパラボラアンテナとLNBFのセットに限定して解説する。

日本のCS放送(not 通信 e.g.アナログCSのSkyport-TV,CS-BAAN,SKYではないPerfecTV,DIRECTV,MUSIC BIRDのチューナーセット付属品やCS放送用と明記してある1衛星対応単体販売品)用アンテナは全て局発11.2GHz,11/15Vで垂直/水平切り替え可能な統一仕様 。

そのため、Skyport-TVからDIRECTVへ移行時、黙っていたらチューナーだけしか貰うことが出来なかった。

アンテナと同軸ケーブルは既存のSkyport-TVのものを流用しろということだった。

また、当時、PerfecTVからDIRECTVへ引き込もうと「あっちむいてホイ!」なんてCMもあった。

DIRECTV単体チューナーを買ってアンテナをJCSAT-3からSCC-Cに向けなおしたら移行可能だった。

なお、SKY PerfecTVは2衛星対応で違う仕様だったので、DIRECTVからSKY PerfecTV移行時は同軸ケーブル以外は全部くれた。

偏波切り替えの電圧が11/15Vと世界標準の14/18Vと違うが、周波数の関係は世界標準に近いので、多くのKuバンドで送信している海外衛星に流用出来る。

はっきり言って、IntelsatシリーズやPALAPA C2、KOREASAT-3 BS以外( 12.25-13GHzの衛星)は全部可能と言っても良い。

また、IF周波数が高からず低からずで程良いので、UNIVERSAL LNBFより概して受信性能が良い。

先に書いた例外衛星受信用以外を受信する場合は、UNIVERSAL LNBFは避けたほうが無難。

110度CSやBSは全然違うので、コンバータ(LNBF)部分は流用出来ない。

いまでもまれに電気店等にSkyport-TVやCS-BAANのアンテナが置き去りになっていることがあるので、勇気を出して家主に交渉したらただで貰えるかも 知れない。

実際それで1つ入手したことがある。

アナログCSの時代は60cmが標準だったので、よりお得。


周波数の違い

上がCバンド,下がKuバンドのLNBF。
周波数 アンテナの大きさ 降雨障害 カバー範囲
Cバンド(3.5-4GHz) 比較的大(90cm以上) 少ない 広い
Kuバンド(10-13GHz) 比較的小(38cm以上) 大きい 狭い

国際的なダイナミックさを体感したいならCバンド受信がお勧め。

マンションのベランダで見たい場合はKuバンドしかない。

どちらが良い悪いというものではない。目的や事情に合わせて選択する。


アンテナ設置の知識

目的の衛星と周波数(CかKuか)を決める。

Lyngsatまささんの部屋の周波数リストやFree TVが参考になる。

最初はPAS-8等の強力な衛星で練習して、徐々に弱い衛星を狙うと良い。

まささんの部屋では受信レベルも開示されているので、参考にすれば良い。

決まったら上の販売店で必要なものをそろえる。

アンテナを取り付けるマストや足場などは通常はついてこないので、ホームセンターや水道管屋等で別途入手する必要がある。

60cm程度までであればBS用の取付金具を流用することも出来る。

次にアンテナの向きだが、次の3つの要素がある。

方位角...アンテナの方位:東-南-西 北は絶対にない

仰角....アンテナの首の上下 センターフィードの場合はあまり問題にならないが、オフセットは見かけの角度より上(大体30度)を受信しているので角度表示が無い場合は注意が必要

偏波角...LNBの左右の傾き

方位角、仰角の具体的な値はハマーズのHPで知ることが出来る。

アンテナを立てる場所の緯度、経度が分からなくても地図から大体の値を拾ってくれるので便利。

もちろんGPSレシーバなどで正確な値が分かればより精度の良い値が得られる。

偏波角はまささんの部屋に資料がある。

まず、アンテナを固定するマストを完全に地球に垂直に立てる必要がある。

曲がっていたら、いくら資料が正確でも正しく向かないことは分かると思う。

方法は簡単で、糸を結んだ五円玉をぶら下げて少し遠くからながめて平行になるようにすれば良い。

方位角の基準の真南、真北はコンパスで得られると考えがちだが、実際は磁石の北と地軸の北は違う場所にあるのであてにならない。

真北や真南ははハンディGPSなどで知ることが出来るが、一番正確で安くつく方法は、南中(太陽が真上に来る時間)時のマストの影をなぞっておくこと。

南中=正午と思われがちだが、実際は季節や場所でずれている。

国立天文台の各地の暦で場所ごと日ごとの時刻を知ることが出来る。

これで衛星を捉えるのがかなり楽になるはずだ。

素人工事なのでぴったりにはならないだろうが。


カラー方式

日本はアメリカと同じNTSC方式を採用している。

しかし、カラーテレビの方式は世界を面積で見るとPAL方式が主流。

海外製チューナーを使用する場合、チューナーにカラー方式変換機能があるものも多いが、初期画面がPALの場合が多いので、PALを見ることの出来る設備は事実上必須。

市場にはカラー方式変換機や免税店で買えるマルチ方式テレビ、方式変換機能つきビデオデッキなどがある。

入手できるのであれば方式変換機ではなく、マルチ方式テレビやビデオの方がPALの画質が優れていてお勧め。

日本国内の地上波も音声がモノラルになるが受信することが出来るので、通常のテレビとしても使える。

通販の場合、例えば海外電気CLUB等で販売されている。


チューナーの知識

受信に必要なパラメータ

DMT-1000のLNB設定画面

チューナーに接続するLNBの情報を設定する。

LNB Freq.1の5150が、局発周波数5150MHzという意味。

局発周波数とは、受信した電波を低い周波数の電気信号に変換するときに、「ひきざん」を行う周波数のこと。

Cバンドは5150MHzがほとんどだが、Kuバンドは9750MHz,10000MHz,10600MHz,11200MHz,11300MHz等いろいろ種類がある。

DMT-1000の周波数登録画面

Transponder:チャンネル番号(管理用で、意味は無い)

Frequency:周波数

Symbol Rate:シンボルレート

Polarization:偏波 H(水平)/V(垂直)/R(右旋円偏波)/L(左旋円偏波)がある。

最低、Frequency,Symbol Rate,Polarizationが分かっていれば多くのチャンネルは受信可能。

上の例では、4151V 11850と表記されることが多い。

実際はPID等もっと多くのパラメータが必要だが、Search TPを実行して実際に受信して取得することで初めて絵が出てくるようになる。


受信可能な周波数範囲

中波やFMと同様、衛星テレビも周波数が一番の要素。

ラジオの場合は目的周波数しかないが、衛星テレビの場合はいろんな周波数が出てくるので、違いを解説する。

チューナーは多くの場合950MHz-2000MHz程度までの範囲を受信することが出来る。

LNBは、実際の電波の4GHzなり12GHzの高い周波数を、チューナーが受信できる周波数まで落とすのが役割。

なぜ、低い周波数に落とすかというと、高いままではすぐに減衰してしまうため、同軸ケーブルを通る間に受信できなくなってしまう。

アンテナ直下で周波数を落とすことで、本来の減衰率より低くなり、また、変換後に増幅することでかえって利得が生まれる。

これをコンバージョンゲインと言う。

周波数は低ければ低いほどなかなか減衰しないが、あまりにも低いと機器が大きくなるため、慣習的に1GHz=1000MHz程度が使われる。

LNBからチューナーまでの周波数をIF周波数と呼ぶことがある。

以下、LNBの局発周波数と受信可能範囲を示す。

チューナーによって受信可能範囲は異なるが、950MHz-2000MHzと仮定する。

LNBの局発周波数 5150MHz(Cバンド) 9750MHz 10000MHz 10600MHz 10750MHz 11200MHz 11300MHz
チューナー=950MHz 5150-950=4200MHz 9750+950=10700MHz 10000+950=10950MHz 10600+950=11550MHz 10750+950=11700MHz 11200+950=12150MHz 11300+950=12250MHz
チューナー=2000MHz 5150-2000=3150MHz 9750+2000=11750MHz 10000+2000=12000MHz 10600+2000=12600MHz 10750+2000=12750MHz 11200+2000=13200MHz 11300+2000=13300MHz
受信可能範囲 3150-4200MHz 10700-11750MHz 10950-12000MHz 11550-12600MHz 11700-12750MHz 12150-13200MHz 12250-13300MHz

Cバンドの場合は選択の余地が無いが、Kuバンドの場合は目的周波数によってLNBの局発周波数を変える必要があることが分かると思う。

Cバンドだけ引き算で、Kuバンドが足し算だが、これは周波数を落とすときに、

Cバンド:LNBの局発周波数-目的周波数

Kuバンド:目的周波数-LNBの局発周波数

と動作が異なるからである。

実際の周波数変換回路では両方の信号が同時に出てくるが、フィルタで片方だけ取り出している。

Cバンドは比較的周波数が低いため局発周波数を高めにとってもそれなりに動くが、Kuバンドは局発周波数を少しでも下げるため=少しでも安定に動かすためにこのようにしている。


シンボルレート,FEC,PID

衛星の中継機=トランスポンダ(トラポン、TP)は大体1つあたり27-36MHz程度の帯域幅を持っている。

衛星によって違うが、トラポンを数個から30個程度装備している。

アナログの場合は27MHzなり18MHzなりの帯域で1チャンネルを送ることが出来る。

ほぼ、トランスポンダ1つか半分の帯域になる。

1.5Mbps程度の速度(方式によって違うが2-3MHz程度の帯域)でそこそこな画質の得られるデジタル方式と比べると甚だ効率の悪い方式というのが分かる。

但し、動きや画面の情報の欠損が全く無いという利点もあるので、特定の分野では使われ続けるだろう。

さて、デジタル圧縮方式が狭い帯域でも送ることが出来る理由は、見えない部分のカット=非可逆圧縮を行うためである。

暗い部分を一律に黒にしたり、複雑な模様をぼかして単純にしたりするという処理がされているからである。

また、完全な絵は秒に1枚程度にして、その他のコマは前のコマと似た部分は送らずに、変化した部分だけ送るという動き方向の圧縮もある。

つまり、デジタル圧縮方式は「うその」映像なり音声を聞いていることになる。

実際オシロスコープで波形を観測して並べてみると、ぜんぜん違う形になる。

また、圧縮には比較作業が必要なため、一度バッファ=ため池に数コマ分を蓄えてから送信、受信側も圧縮済みデータを展開するのに受信データを蓄えてから展開するので数秒前の 映像や音声を見聞きしていることになる。

アナログは伝送路の遅延を除くと全く遅延は無いので、用途によってはデジタル圧縮は使えないことになる。

それでも意味が分かれば人間は納得するのである。

逆にはっきりした輪郭、濁りの無い発色なので若い人はデジタルの方を好むようである。

理論が分かったところで各パラメータの説明を行う。

・シンボルレート

 使う帯域の広さ。

 広いほどあまり圧縮をしなくてもすむので画質が良くなる。

 また、広いと複数の映像、音声を1つの電波にまとめることが出来る。

 DVDソフトでマルチリンガルやマルチ画面を持つソフトがあるが、この特徴を利用しているからだ。

 どうして出来るかというと、先にバッファに蓄えてから送信、受信後バッファに蓄えてから展開と説明したが、もし、人間が知覚できる以上の速度で送ることが出来れば、バッファに複数の映像や音声を蓄えて、それを取り出すときにバッファが空にならない限りは破綻しないからである。

 これをMCPCと呼ぶ。

 イメージとしては機械=映像ソースとして、機械Aと機械Bを分解して部品にして荷札をつけてベルトコンベヤで送り、終点で一度プールしておいてから組み立てなおすことで機械A,Bを目的地に送ることが出来ると比喩できる。

 この時に組み立てなおす=映像の表示する速度よりベルトコンベヤの速度が十分速ければ、プールに十分な量の部品が届いた後は破綻無く最短の時間で両方の機械が組みあがる。

 MCPCは、普段はすべてのチャンネルが同じ帯域を使っているが、あるチャンネルが映画のクライマックスで動きが激しい場合、他のチャンネルの圧縮率を一時的に上げて映画だけ下げて画質を確保する、という統計多重という手法が使えるので、特に放送には重宝する。

 シンボルレートは必須のパラメータ。

 一般に帯域が大きいほど衛星のリース料が高くなるので、経済性を考えると小さいほうが良い。

 逆に品質は大きいほうが良く、また、広いと周波数を合わせやすい=受信機の安定度が少々低くても再生できるので、 放送には広いシンボルレート、素材伝送や企業内通信では狭いシンボルレートという傾向がある。

 なお、あえて映像と音声を1組だけにして狭いシンボルレートにして、それを複数並べることで複数チャンネルを送信することが出来るようにすることもある。

 これをSCPCという。

 統計多重は使えないので画質や音質の上限が決まっているが、各チャンネルが物理的に別の場所から送信した場合でも問題が無い。

 MCPCでは送信側で1つにまとめるのでこのような芸当は出来ない。

 事件現場からの中継=SNGには非常に好都合。

 また、ASIASAT-2の中国地方局は各々が物理的にかなり離れているのでMCPCを行うことが難しく、SCPCで送信している。

・PID

 PacketIDのこと。

 シンボルレートの説明で、機械Aを部品に分解と説明したが、その部品がどの機械のものか、どの部分の物かをしめした荷札=識別子がPIDに相当する。

 識別子の説明のための特別なPIDがあり、これにPID何番は音声の何番目とか映像だとかの説明書きが入っていて、これを解析することで新しいチャンネルが増えたり減ったりということをチューナーが知ることが出来る。

 そのため、通常は知らなくても良い。

 なお、擬似スクランブルのためにあえてPIDの説明書きが出ていないことがあり、その場合はチューナーに手入力して教えない限り正常に見ることが出来ない。

 APID(音声),VPID(映像),PCR-PID(タイミング:圧縮とバッファを使うため、ちょっとずつ再生速度がずれていくことを避けるためのパケット)がある。

・FEC

 デジタル信号はアナログ信号を数字に変換して(量子化という)2進数にして送ったり受けたりする。

 2進数は0と1の長い並びで表現するが、2種類しかないのでたとえば0.8で届いたら1、0.2で届いたら0であろうと大体想像できる。

 0と1の間で表現するアナログに比べてノイズに強い理由なのだが、では0.5で届いたときはどうするのか。

 1/2の確立で間違い=エラーが起きることが分かると思う。

 そこで、たとえば1を111というように3回送るとどうなるだろうか。

 3つのうち2つか3つ全部が間違わない限り問題ないので確実そうだ。

 これがFEC=Forward Error Collectの原理。

 上の例ではデータの量が3倍になってしまうので、せっかく元データが圧縮されていてもあまり意味が無くなってしまうので、実際は畳み込み法とかのもっと高度な=データ8ビットに3ビット追加などのデータ量があまり増えない方法で行う。

 FECは分数で表し、1/2,2/3,.3/4,4/5,5/6,6/7.7/8という種類がある。

 1/2はデータが全体の1/2で検査情報が1/2、2/3はデータが2/3で検査情報が1/3という意味。

 分数の大きさが大きいほど検査情報が少ない=エラー訂正能力が低いということになる。

 よって、全く同じ衛星で、同じシンボルレートでもFECが大きいほど受信設備のしっかりしたものが必要になる。

 現在のデジタルチューナーはFECは自動認識が大多数。

 当然だが、FECは少しでも円滑にデータを送るための知恵であるがちょっとだけ間違っている場合のみに使える。

 あまりにも劣悪な条件では意味が無くなる。

 FECに頼るような貧弱な設備の場合は天候その他の別の原因で電波が弱まった場合にてきめんに受信不能になるため、十分余裕のある設備の準備 、あるいは諦めが肝心である。


フットプリント

静止衛星は理論上太平洋、インド洋、大西洋の3箇所に静止していれば世界中をカバーすることが出来る。

しかしながら、全く持って無駄なことに現実には100以上の静止衛星が稼動している。

もし、超大国が覇権を得て地球国家を樹立した際にはおそらく大部分の衛星は機能を停止させられるだろう。

大きな理由の1つに、以下の理由により、カバー範囲を故意に狭めている。

カバー範囲という用語を用いたが、一般にフットプリントという用語を良く使う。

足跡という意味。

地図上に気圧図のような崩れた同心円状の線を引き、信号の強さを表した図。

一般の衛星の場合は公開されている。Lyngsatの場合はBeam欄をクリックすることで参照できる。

新しい衛星であるほどフットプリントと実際のカバー範囲は一致する。

一致しない部分=設計以外の場所への電波の漏れをスピルオーバーと呼ぶことがある。

先のBSの話の例を使うと、「かつて日本のBSは日本以外の国へのスピルオーバーが大きかった」となる。

電波の周波数が高い=波長が短いほど同じ利得を得るのに物理的に小さなアンテナですむ。

逆に言えば、同じ大きさのアンテナの場合、高い周波数ほどカバー範囲が狭くなるとも言える。

実際、CバンドとKuバンド両方を持っている衛星の場合、多くはCバンドのフットプリントはだだっぴろく、Kuバンドのフットプリントは局地的になる。

そのため、アンテナを複数用意して垂直偏波と水平偏波でフットプリントを変えるなどしてカバー範囲を広げようとしている衛星もある。

Cバンドは国際的、Kuバンドはローカルという傾向が生まれる理由だ。


衛星の事情以外のトラブル

衛星テレビは物理法則をほぼ理想的に使った非常に優れた方式である。

しかしながら、人間の世は物理法則では説明のつかないことも多い。

ここでは機械的故障以外の問題を考える。

 

Lyngsatを毎日見ていると、同じ局が出たり消えたりを繰り返していることがある。

単に送信側装置の故障なら良いのだが、放送内容が当局にとって問題の場合に止められてしまう、というケースも過去にあった。

また、中継器のリース代未納で衛星管理会社から止められたり、同じ中継器に別の顧客が同居している場合はジャミングをかけて排除しようとしたという事件もあった。

また、国情の違いで放送時間が非常にルーズで開始遅れはともかく予定より何分も早く始まったり、番組差し替えがある場合もしばしばある。

基本スタンスは「見えてラッキー、見えなくて残念」でいないとストレスがたまることになる。

これは有料放送の場合でも事情は同じで、突然サービス中止になることはめずらしいことではない。

かようにリスクが大きい趣味のため、確実さを求める向きにはあまりお勧めしたくないのが本音だ。

反面、現地の最新音楽やCM、生中継のニュースなど日本では味わえない番組が存在することも確かだ。


アナログBSチューナーをレベル計として使う

アナログBSチューナーのレベル表示は、デジタルチューナーと比べて反応が良いものが多い。

そのため、大体の位置決めに使用するには向いている。

利用にはいくらかの制限があるが、当てはまる場合は挑戦してみても良いだろう。

配線は以下のとおり、デジタルチューナーのIF OUTとアナログBSチューナーのアンテナ端子を同軸ケーブルで接続するだけ。

アナログBSチューナーのコンバータ電源は必ずOFFにすること。

さもないとデジタルチューナーに悪影響を及ぼす場合がある。

デジタルチューナーは目的の周波数をスキャンできる状態にする。

この方法の制限は、

制限1:映像が全く表示されないのでレベル計としてのみ使える

制限2:目的の衛星の周波数と合う可能性が低い

     以下の周波数+-5MHz付近を受信する場合のみ使える

  チューナー受信周波数 LNB:5150MHz(Cバンド) LNB:9750MHz LNB:10000MHz LNB:10600MHz LNB:10750MHz LNB:11200MHz LNB:11300MHz
BS1 1049MHz 5150-1049=4101MHz 9750+1049=10799MHz 10000+1049=11049MHz 10600+1049=11649MHz 10750+1049=11799MHz 11200+1049=12249MHz 11300+1049=12349MHz
BS3 1088MHz 5150-1088=4062MHz 9750+1088=10838MHz 10000+1088=11088MHz 10600+1088=11688MHz 10750+1088=11838MHz 11200+1088=12288MHz 11300+1088=12388MHz
BS5 1126MHz 5150-1126=4024MHz 9750+1126=10876MHz 10000+1126=11126MHz 10600+1126=11726MHz 10750+1126=11876MHz 11200+1126=12326MHz 11300+1126=12426MHz
BS7 1165MHz 5150-1165=3985MHz 9750+1165=10915MHz 10000+1165=11615MHz 10600+1165=11765MHz 10750+1165=11915MHz 11200+1165=12625MHz 11300+1165=12465MHz
BS9 1202MHz 5150-1202=3948MHz 9750+1202=10952MHz 10000+1202=11202MHz 10600+1202=11802MHz 10750+1202=11952MHz 11200+1202=12402MHz 11300+1202=12502MHz
BS11 1241MHz 5150-1241=3909MHz 9750+1241=10991MHz 10000+1241=11241MHz 10600+1241=11841MHz 10750+1241=11991MHz 11200+1241=12441MHz 11300+1241=12541MHz
BS13 1279MHz 5150-1279=3871MHz 9750+1279=11029MHz 10000+1279=11279MHz 10600+1279=11879MHz 10750+1279=12029MHz 11200+1279=12479MHz 11300+1279=12579MHz
BS15 1318MHz 5150-1318=3832MHz 9750+1318=11068MHz 10000+1318=11318MHz 10600+1318=11918MHz 10750+1318=12068MHz 11200+1318=12518MHz 11300+1318=12618MHz

カタログスペックの読み方

チューナーのカタログスペックの意味。

注記無い場合はアナログ、デジタル共通。

メーカー

おそらく聞いたことも無い会社ばかりと思う。

実際、ほとんどが零細企業が製造している。

有名企業でもHDT(ヒュンダイ)ノキア程度。

故に会社が消え去ることもしばしば。

人柱精神の乏しい方はお勧めできない。

最初のうちは使っている人が多い=評判の安定した機種が無難。

SkysatさんのHPで使用チューナーのアンケートがあるので参考に。

古いもの、日本で入手しやすいものが上位に来ているので、上位=必ずしも良いものかどうかは不明。

機種名をクリックしてコメントを参照すること。

入手経路は店頭展示はまずなく、海外通販、オークション、個人売買がほとんどと思う。

実際の試用は持っている人の家に行って見せてもらう以外にはまず出来ない。

安心できる販売店で買うこと。

端子関係
 

○電源電圧、コンセントの形

 大概は90-240Vのワイドレンジ対応と思うが、200V専用という場合も結構ある。

 ワイドレンジ対応の場合は100Vでも少し電圧が低いが大概は動作する。

 動作不安定の場合はトランスで昇圧することで安定することもある。

 コンセントは国によってまちまちなので、日本仕様とは形状の異なる可能性がある。

 変換コンセントが別途必要な場合もある。

○アンテナ入力(IF IN)

 ここに同軸ケーブルを接続する。

 日本のBS/CSチューナーと全く同じFコネクタ。

○IFスルー(IF OUT)

 アンテナ入力の信号がそのまま出ている。

 2台目のチューナーを直列に繋いだり、スペアナ等の測定器を接続する。

 この端子を使う場合、後ろに繋ぐチューナーのLNBF電圧は必ずOFF(0V)にすること。

 まれに誤動作の原因になる。

○RF IN/OUT

 地上波テレビのアンテナを繋いだり、テレビのアンテナ入力へ接続する端子。

 ビデオデッキにあるものと同じだが、コネクタの形が微妙に違うので実際は使えないことが多い。

 この端子があるチューナーはRFモジュレータ内蔵なので、うまく使うと家庭内CATVが可能。

 当然日本のチャンネルプランと違うので、例えNTSC-Mに切り替えても使えない可能性もある。

○0/12V(0/5V)

 専用の端子電圧を0V/12V(0V/5V)の切り替えが出来るかどうか。

 チャンネル毎にどちらかの状態を記憶させて、対応の切り替え機を使って同軸ケーブルの切り替えに使ったりする。

 とても古い規格で普通のチューナーにはまず装備されているが、別に配線が必要なのであまり使われない。

 ただ、分かりやすい出力なのでアイデア次第ではおもしろい使い方もあるかも。

○0/22KHz TONE

 同軸ケーブルに22KHz TONEを重畳できるか。

 この信号を用いてUniversal LNBFの受信バンドを切り替えたり、同軸ケーブル2系統を切り替えるといったことが可能になる。

 0/12Vと違って別の配線が不要なのがメリット。

 古い規格で、普通のチューナーにはまず装備されている。

 互換性問題が少なく確実に動作する。

 スカパー1の衛星切り替えにも使われている。

○DiSEqC(ダイセック)対応

 対応切り替え機を使うことで同軸ケーブルを最大4本切り替えることの出来る規格。

 同軸ケーブルに特別な信号を流すことで切り替え専用の配線不要を実現している。

 22KHz TONEとは共存(切り替え機を通過)可能。

 また、連動してアンテナを動かすモーター制御出来るものもある。 

 最近の主流。

 規格は1.1,1.2,2.0といろいろある。

 大概のチューナーには装備されているが、互換性はあまり高くないので希望通りの動作をしない場合もある。

 いくつかはエニーテックで互換性情報を得ることが出来る。

○13/18V

 LNBFへの供給電圧。

 昔は15V単一が多かったが、最近では偏波切り替えのために13V(垂直)/18V(水平)が選択できるものがほとんど。

 国内のCS放送用LNBFは11/15Vなので、そのままつなぐと故障する。

○CI(Common Interface)

 スクランブル解除用のスマートカードを挿入するスロット。

 FTA(Free To Air:ノンスクランブル)専用のチューナーには無い。

 あってもスクランブル方式によって仕様がまちまちなので、契約したい会社に確認することをお勧めする。

 ごく一部を除いて日本では契約できないので、あえてこのスロットのあるチューナーを買う必然性は低い。

○RCA端子、S-VHS

 ビデオデッキに装備されているような普通の映像/音声出力端子。

 黄色が映像、赤が右音声、白が左音声なのも共通。

 S-VHSはS端子。カタログには必ずこの表記になっているが、なぜにVHSが入るのかは謎。

 (海外ではせいぜいHiFi音声までで、S端子が装備されている高級なビデオデッキは金持ち以外にはほとんど売れていないらしい)

 ちなみにコンポーネント出力やD端子を備えたチューナーは私は見たことが無い。

○SCART(スカート)端子

 ヨーロッパで主流のTVと接続する端子。21ピンの大きなコネクタ。

 RGB出力やTV入力切替も可能。

 ノキアなどの高級なチューナーの場合、この端子しかない場合もある。

 RCAへの変換ケーブルは市販されている。

○アンテナ制御

 高級なチューナーに装備されている。

 アンテナを動かすアクチュエータやH-Hマウントの制御用。

 チャンネル毎に位置が設定できるものもある。

 内蔵の場合でも大概一軸制御なので、本格的にアンテナを動かすなら専用のコントローラの方が便利。

○RS-232C

 主にファームウエア(PCのBIOS+OS相当)のバージョンアップに使用する。

 パソコンとクロスケーブルで接続してバージョンアップできるものがほとんど。

 しかし、どうやって最新版のファームウエアを入手するかはメーカによってさまざまなので、分からない方はしないほうが無難。

 ノキアのようにフリー(ノキア以外の組織が開発した)のファームウエアが存在する機種もある。

○その他

 ノキアのチューナーにはSCSI端子がついているものがある。

 PCからチューナーの制御を行ったり、受信したデジタルデータを出力可能なようだ。

 国内のBS/CSチューナーにあるようなi.Linkやビデオマウスの類はまず無い。

今は見かけない昔の端子

○パルス出力

 偏波切り替えの出力。+-パルスの3本が陸軍端子で出ていることが多い。

 別に配線が必要だが、垂直と水平の間を90ステップ程度変化出来るため、対応フィードホンを使うことで厳密な偏波角調整が可能。

 アナログの時代はC/Nを測定して偏波角のオートフォーカスが出来るチューナーもあった。

 構造上LNBとフィードホンの一体型を作るのが困難、LNBFと比べて内部にある板を回転させるためロスが発生する、モーターというメカ部分が必要なため短寿命とデメリットが多いため最近はほとんど使わない。

 なぜかシステックSDR-1000RmkIIには装備されている。便利に使っている。

○検波出力

 多くはRCA端子。

 アナログ時代にはアナログWOWOWのようにここにデスクランブラーを接続した。

 デジタル時代では意味が無いため装備されていないことが多い。

カラー方式

○カラー方式変換機能

 最近は競争が激しいのでよほど安い製品でなければ装備されているが、確認が必要。

 世界の大半がPALなので、初期設定はPALの場合が多い。

 PALでは困る場合は販売店に頼んで初期設定をNTSCでやってもらうなどの処置が必要だが、チューナーが初期値に戻った場合のことも考えること。

 アメリカ、韓国、台湾向けの場合は初期設定がNTSCのものもまれにあるようだ。

 ちなみに国産のシステックSDR-1000RmkIIも初期設定はPAL。但し、リモコンで切り替え可能。

○OSD(On Screen Display)

 ありていに言えば設定画面のこと。

 アナログの時代はチューナーのLEDだけで設定するものもあったが、デジタルチューナーはほぼ100%TV画面に設定画面を表示する。

 信号を受信していない場合、通常はPAL方式で出力されることが多い。

 もちろん受信中は受信信号にあわせたカラー方式で出力される。

 カラー方式変換機能のあるチューナーでも、初期設定がPALということが多いので注意。

受信性能

感度や選択度といったものはチューナーユニットで決まるが、ほとんど日本製なので有意な違いはあまり無い。

ほとんどの場合QPSK復調以降のデジタルになってからが違う。

壊れたデジタルデータをいかに再現するかという部分の差が大きい。

○IF受信範囲

 広いほど受信できる周波数の範囲が広がる。

 内部のチューナーユニットの仕様で決まる。

 デジタルチューナーの場合はほぼ950-2050MHz程度。

  なお、広い=劣悪な信号の受信性能が落ちるという傾向もある。

○SCPC対応

 カタログに載っている場合は、狭いシンボルレートも対応という意味で使う。

 シンボルレートが狭いと概して安定度が良いチューナーでないとロックが外れやすい。

 KOREASAT-2やASIASAT-2を狙う場合は少なくとも2000ksps程度まで低いシンボルレートに対応している必要がある。

 上は30000Ksps程度まで受信できれば十分。


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